デザインの基本原則2(概念モデル)

前回の記事でデザインの基本原則をご紹介しましたが、そちらで抜けていたもう1つ重要な概念をご紹介したいと思います。

SaaSなどの多機能で複雑な機能要件を抱えるサービスを、「わかりやすく作り上げる」にはデザイナーは何を基準にUI/UXをデザインしていけば良いでしょか。

今回は人が感じる「わかりやすさ」の指標となる<概念モデル>について自分なりにまとめてみたいと思います。デジタルプロダクトのUI/UXをデザインする上で意識しておくとユーザーにとってわかりやすく、また言語化しやすいデザインができると思います。

概念モデルとは

概念モデルとは人間が対象を知覚したときに無意識的にイメージするモデルです。

例えば私たちは蛇口を見たときハンドルを捻ると水が出ることを知っています。 なぜ私たちはハンドルを捻ると水が出るとわかるのでしょう?

蛇口

これは私たちが「ハンドルを捻ると水が出る仕組み」を無意識にイメージしているからです。 そして「掴んで回せそうなハンドル」や「水が出てきそうな蛇口の先端」はユーザーのイメージ化を助ける手がかりとなります。 また<概念モデル>はユーザーのイメージなので、正確である必要はありません。 水道から水を飲むのに川やダムから水がどのように家庭に届けられているかまで理解する必要はないのです。

イメージ化

蛇口のように機能が単純であり、物理的に存在する製品であれば、機器が示唆する構造をイメージ化し、<概念モデル>を頭の中に形成することは比較的かんたんに行えます。

しかし、デジタルプロダクトのように複雑で多機能な機器をイメージ化するのは一苦労です。 そこでデザイナーはイメージ化を容易にする手がかりを提供しなければなりません。

例えばGUI(グラフィックユーザーインタフェース)などはその手がかりの1つと言えるでしょう。

コンピュータの画面上にフォルダのアイコンがあります。 私たちはこのフォルダアイコンをクリックすると中身のファイルが表示されることを知っています。

これはデザイナーが「現実のフォルダと、その中に収納されている書類」というアナロジーをイメージ化の手がかりとして提供し、それによってフォルダの<概念モデル>が形成され私達はフォルダシステムを利用します。

では実際のフォルダシステムはどのような構造を持っているのでしょうか。 実際のフォルダシステムは階層的に情報を保持しているわけではなく、ファイルが記憶ディスク(HDやSSD)上のどの場所に保存されているかという位置情報を保持しているというような構造になっています。

参照:教養としてのコンピュータサイエンス講義

しかしユーザーはコンピュータの論理構造を理解しなくても<概念モデル>を自分の中に形成するのとでフォルダシステムを利用することが出来ます。

このように複雑な機器とユーザーがコミュニケーションできるよう<概念モデル>の形成を手助けするのがデザイナーとしての重要な仕事です。

概念モデルを形成するのに役立つのはGUIだけではありません。 遷移の設計やマイクロアニメーション・パターン化・普遍化など多くの要素があります。

デザイナーはプロダクトを通してユーザーが良い概念モデルを形成できるように適切な情報を提供しなければなりません。 ユーザーが概念モデルを形成していく過程を素早く、楽しく行えるようにUI/UXを設計することが大切です。