皆さんこんにちは、Product Designerの保川です。春らしい季節になってきましたね。
今日はプロダクト開発を進めるにあたり、私たちが顧客をどのように捉え、インサイトを得ているのかお話ししたいと思います。
B2Bの顧客理解はなぜ難しいのか?
B2Bプロダクト業界においてよく言われるのが、B2Cと比べて「ユーザーのインサイトが取りにくい」ということです。インタビューのお返しにギフトをわたすこともできないし、Eメールキャンペーンも通用しません。でもそれだけではないです。
決める上司と使う部下
B2Bはなぜユーザーインサイトを得ることが難しいのか。それは、意思決定者(購買者)とユーザーは別物である、ということが一つ大きな要因だと考えています。
例えば、プロダクトを購入する意思決定者はマネージャー以上、もしくは小規模な会社であればCEOであったりします。しかし、実際のユーザーは一般社員の場合も多い。この両者は、プロダクトを全く異なる目線で見ています。 意思決定者は、投資や説明責任、コスト削減の視点からプロダクトを評価します。対して、ユーザーは、日々の仕事の成果やミスの有無、効率の観点からプロダクトを見ます。この視点の違いこそが、プロダクトが現場で「詰む」原因になります。
組織の構造に埋もれがちなユーザーペイン
ユーザーは意思決定者から、「会社の意向だからこれ(プロダクト)を使って欲しい。」といきなり言われるかもしれません。ユーザーのペインは会社の構造や政治によってうまく意思決定者に伝わらないかもしれません。そして、プロダクトのユーザーの思いは意思決定者が主となる会議などの表舞台には一切出てこないかもしれません。
そうなると、プロダクトをユーザーが普段どのように使い、何に使いにくいと感じているのか、そしてどんな潜在ニーズがあるのか。そんな声は当然埋もれてしまいます。

業務には沢山のしがらみと感情がある
また、業務において、ユーザーは様々なしがらみにとらわれています。例えば、彼らは単にプロダクトを使って行う仕事だけをしているわけではないということ。まず、プロダクトを使う仕事がそもそもメインの仕事なのか?例えば調達業務であれば、1日3件調達する人と、50件調達する人では、工程や効率への要求が大きく異なります。また、1件において何品目扱うかによって、まとめて編集したいのか、保存が大事なのかなども変わってきます。 さらに、ユーザーの仕事にまつわる上司や同僚からの期待、プレッシャー、など様々な感情的なタスクもこなしている可能性があります。そして、それはユーザー自体が気づいていない部分でもあったりするのです。
「点」ではなく「面」で捉える難しさと醍醐味
実際のユーザーを理解するには、彼らだけでなく全体を捉えることも重要です。誰が、どんな思いをもち、どんな関係で仕事をしていて、どんな仕事の一環でプロダクトを使ってくれているのか。そして彼らはどういう人達と協働しているのか。また、意思決定者とはどんな関係性にあるのか。(ここまでやるのは本当に大事、ですが、難しい!)
だからこそ、B2Bのユーザーインサイトを得ることは難しく、とてもチャレンジングです。けれども、それこそが醍醐味です。
ユーザーの声が埋もれがちだからこそ、Product Designerはユーザーインサイトを様々な角度から取りに行く必要があるし、そうしなければ、本当にユーザー目線のプロダクトを作ることができなくなってしまう、重要な役目を果たしています。
「生産構造×業種」で見えてくる調達業務の奥深さ
私はキャディに入社したときに、「調達業務」とは何か?すら全く知らない状況でした。そこで、手当たり次第に製造業の動画をあさっていたところ、同僚が社内に調達経験がある人が複数いることを教えてくれました。
私は、早速アポをとり、調達の業務についてインタビューを6人のユーザーに行いました。そこで、同じ調達といっても量産と少量多品種によって大きく彼らの仕事内容や業務の見方が異なることがわかりました。
見積は手段、本当に解決したい「手前の悩み」
例えば、量産においては「見積業務は判断材料に使える材料」「なぜこの価格なのかの説明責任を果たすもの」であったりするのに対して、少量多品種においては、「下流の流れをとにかく止めないために調整するもの」であったり。当初の私は、「調達の人って見積依頼をかけ、条件が変わったら再見積を行い、価格の合意をするのだろう。」という漠然とした理解がありましたが、インタビューを通して、調達担当の方が本当に解決したいのは、見積を取ることではなくて、もっと手前の状況を整えることだということを理解しました。
そして、最も興味深かったのは、それが生産構造だけでなく、業種においても大きく異なるということです。例えば、プラントを作るくらいの規模の調達と、治具の調達とでは、規模も、個数も異なるため、気にする部分も全く違う。だから、調達のバラエティは生産構造×業種分あるとも言えます。
ペルソナは必ずしも正解ではない
アーキタイプとは
一般的に、ユーザー理解といえば、ユーザーインサイトから具体化したユーザー像(ペルソナ)を作ることが推奨されますが、特にキャディのプロダクトにおいては必ずしもその必要はないと考えています。先に述べた理由が大きいですが、業種や製造形態による違いで、課題も意思決定構造も大きく変わるため、「XX歳、製造現場出身調達」のようなペルソナは機能しにくいです。 代わりに、役割や製造構造に応じた一定のユーザーグループであるアーキタイプの方が相性がよいと考えています。
アーキタイプとはペルソナよりも広い概念であり、「行動パターン、動機、目標」にフォーカスを当てたユーザー分類です。
誰か、よりどう動くか
B2B、特に生産構造×業種の数だけ変数のある製造業においては、具体的な「個人(Who)」を描写するよりも、「どういう状況で、なぜ動くのか(Why,How)」という行動原理で捉えたほうが、ユーザーへの解像度は圧倒的に高まります。
私たちのプロダクトには、具現化したユーザー像を満足させる以上のプロダクトの価値があると考えています。だからこそ、この複雑なアーキタイプを深く理解し、それぞれの構造に最適化された価値を届けられるよう、今以上に現場の解像度をとことん上げる必要があります。
製造構造と業種の数だけ解像度を上げるなんて、そんな簡単な話じゃないんじゃないの?と思われるかもしれません。でも、キャディなら可能だと思っています。それは、社内リソースが強力だからです。
最強のリソースは社内から
キャディには祖業であるManufacturing事業を含め、何百人の顧客と関わったプロフェッショナルたちが多くおり、彼らから学ぶことがものすごく多いです。顧客と関わるSales、CSの一人ひとりの頭の中には解像度の高い顧客(意思決定者並びにユーザー)がいて、彼らのレンズを通して顧客を理解することが最も近道であり、有力な情報収集になると考えています。
現場で決めて、動く
これこそがキャディの強みだと私が考えていることの一つは、ビジネスサイドからプロダクトフェーズまで、一丸の意識が強い、ということです。例えば、直接CSとコンタクトをとって顧客訪問に同席をお願いさせてもらったり、定例会議に参加させてもらったり、ということが現場レベルでできます。CSの言葉を借りて言えば「こういう現場レベルで何をやる・やらないの判断ができるのは強い。」のです。なぜなら、個々の主体性と責任で物事を推進しているからです。 これこそまさに、キャディがスピード感と一体感を持って仕事ができる現場である所以なのかもしれません。
他者のレンズを通して顧客理解を深める
また、先人たちのお陰で顧客のニーズが定性データとして共有される仕組みも社内では整っています。こういった取り組みは、プロダクトの末端にいるユーザーのインサイトを様々なステークホルダーを経由して、異なる角度から得られる、大事なインサイトです。 こういった断片的な情報の塊を集めてユーザーのインサイトはより分厚いものになっていくのだと思います。
また、キャディには「1日検証会」というものがあり、そこでは潜在的なユーザーに実際にプロダクトを触ってもらう、という機会もあります。こういった機会を通して口頭ではわからないユーザーの行動パターンや、ITリテラシー、宝の山となるインサイトを得ることもできました。
デザイナーは「想い」をつなぐ架け橋
Product Designerの役割は、インサイトをつなぎ、構造として再解釈することだと考えています。ユーザーは一人ひとり異なる存在であり、その背景にはパーソナリティや経験など多くの要因があります。 だからこそ、n=1の事象をそのまま扱うのではなく、抽象化しながら意味を見出していく必要があります。
また、私は社内の人たちの仕事を理解することもProduct Designerとしては重要な部分であると思っています。キャディのメンバーを知れば知るほど、プロダクトに熱く、顧客を大切にしている人たちなのだと感じます。そして、それ以上に、ビジネス文脈を含んだユーザーのニーズが色濃く見えてきます。
明確な正解があるわけではありません。だからこそ、プロダクトに関わる一人ひとりの想いや情報を取り続けながら、仮説と検証を繰り返していく。そのプロセス自体が、この仕事の難しさであり、面白さだと感じています。