人間がAIに教わる難しさは、AIが図面を読む難しさと同じだった話

こんにちは、D&A部の安本です。 この記事では私が日々AIと格闘する中で得たTIPSを紹介します。 なお、この記事はCADDi Tech/Product Advent Calendar 2025 19日目の記事です。他の記事についてもぜひご覧いただけると嬉しいです。

はじめに

私はAI for Applicationチームという、機械学習機能を業務アプリケーションに提供するためのチームに所属しています。そのために顧客の業務理解が必要な場面がたくさんあり、背景知識を得るために汎用LLM(以下AI)を活用しています。この記事では最近調査することが多い機械加工技術を対象に、つまづいた点とTIPS、活用事例をまとめていきます。

課題

私がAIに質問して機械加工技術について情報を得る上で、つまづいた点は大きく2つありました。まずそれらをご紹介していきます。

1.正解が定まらない内容が多いこと

例えば「ネジ穴の長さは最低どの程度必要か」が知りたい場合、リファレンスによって下図のように内容が異なります。 これらは記載の前提が異なるだけで、どれかが正解・間違いというわけではありません。しかし、AIから情報を得る際には自分が知りたかった内容かを確認する必要があります。

2.望んだ回答が得られているかわかりづらいこと

AIから望んだ回答が得られないケースとして次の2パターンが考えられます。ひとつはハルシネーション(AIの嘘)です。よく知られている通り、AIは質問された内容に対して誤った回答をすることがあります。もうひとつは、課題1で記載したように、質問したい内容が伝わっていない場合があります。個人的には、AIから新しい知識を得る上では後者の影響が大きいと感じています。 ここで問題となるのは、望んだ回答が得られているかが判断が難しい点です。この原因のひとつは、自分にとって未知の知識のため正しさの判断が難しいこと、もうひとつはAIの回答に質問に対して直接的な回答でないことを多く含むことです。これはAIにうまく質問内容が伝わっていないために起こります。この場合、大抵はAIの中でも何を答えれば良いか具体的にはわかっていないため、AIは考えうる選択肢を網羅的に回答しようとします。これらの影響で「たくさん回答が出てきたけどよくわからなかった」という結果につながります。

解決策

このセクションでは上記課題の改善に役立ったTIPSをまとめます。

1.回答してほしい対象を明確にしコンテキストを伝えること

よく言われることですが、対象を明確にし、コンテキストを伝えることはとても有効です。これらを伝えることで、自分の知りたい内容を指示できるので自分が欲しかった回答がピンポイントで得られるようになります。例として先ほどの「ネジ穴の溝長さは最低どの程度必要か」の場合について下図にまとめました。 このように書き換えることで、本当に欲しかった情報のみが回答されるようになります。

  • ※1:材質の一種。
  • ※2:タップ穴(=ねじ切り穴)サイズの呼称。
  • ※3:ねじ切り穴の別名。機械加工ではタップ穴と呼ばれることが多い。
  • ※4:穴の縁を筒状に立ち上げ、ネジの長さを確保する加工。

2.専門用語を適切な文脈で使うこと

専門用語を使うことで、効率的に質問の前提を伝えることができます。似た手法として「あなたは〇〇の専門家です」といった形で、特定の文脈をAIに与える手法があります。専門用語を使うことでさらに限定的な文脈情報を与えることができるため、より効果的になります。自分の体験としても、一般的な言葉を組み合わせて説明するよりも専門用語を使ってシンプルに指示した方が効果的な回答が返ってくると感じています。 この方法は、質問の具体性を上げることとよく似ています。例えばスマートフォンがネットにつながりにくい場合を考えてみましょう。ここでAIに質問する際に「スマートフォン」→「iPhone 12」と自分の使っている機種を伝えることで「結構古い機種を使っているんだな。iOSのサポートが切れていないか確認しよう」と考えられるようになります。専門用語を使うことでもこれと同様に、効率的に背景と課題を伝えることができます。 注意点もあります。ひとつは正しい文脈で用いる必要があることです。誤った文脈で専門用語を使うとかえって回答精度が下がる可能性があります。もうひとつは、AIの知識にない用語を使うとその解釈を誤ることです。特に社内用語にはご注意ください。普段当たり前に使っている言葉が一般的な言葉ではない場合があります。

応用事例

ここまでAI利用のコツを紹介してきましたが、これらは私たちが開発している図面解析の難しさに直結しています。その内容と関連する取り組みについてご紹介します。

図面解析の難しさ

図面とは製品の特徴や製作方法を説明するための画像情報です。このように書くと図面解析 = 画像解析というイメージになるかと思いますが、実際には以下のような課題が組み合わさった複合タスクです。

  • 1枚の画像に込められた情報量が多く必要な情報のみを取り出す必要がある
    • → 画像から何を読み取りたいか効果的に指定するプロンプトエンジニアリング
  • 複数ファイル(画像と画像、画像と文書など)を組み合わせて指示する場合がある
    • → 関連する情報を正しく引き当てる(RAGなど)
  • 図面に書かれた文字・絵とAIの専門知識を組み合わせた読解が必要
    • → 画像情報と文字情報をセマンティック(意味的)に解釈・解析する

我々はこれらの情報群からユーザーが知りたい情報を適切に取り出すことにチャレンジしています。

我々の取り組み紹介

キャディは、以下のような武器を持っているため、この課題を解決できる数少ない企業の一つです。

  • 製造業の調達プロセスに実際に入り込んだ経験知・ドメイン知識
  • 製造業特化のLLMベンチマークデータセットを元にLLMの知識量を測定できる
  • 様々な製造業データの解析技術・RAGを使った集計技術

筆者は上記のアセットを活用し、ドメインエキスパートの知識を借りつつ課題を整理して技術検証しています。ひとつひとつキャッチアップしながら進めるためとても泥臭いですが、着実に前に進められていると感じています。

なお、RAG技術については弊社竹本が別記事でまとめていますのでぜひご覧ください。 https://caddi.tech/2025/12/10/090000

またLLMベンチマークデータセット作成についても近日中に別記事でご紹介する予定です。

まとめ

ご紹介した方法を使うことで自分が知りたい内容をAIに効率的に伝えることができ、コンテキストが揃わず望んだ回答が得られないことはグッと減ると思います。一方、AIは正しく質問を理解していても間違った回答を返すことがあるので、注意が必要です。 AIは、使い方には注意が必要ですが、適切に使えばとても便利なものです。私も顧客にAIプロダクトを提供するにあたり、製造業とAIプロダクトの両方を踏まえて議論する場面が頻繁にあり、両者を効率的に理解するためAIをたくさん活用しています。実はこのブログの画像もAIで生成した画像を少し手直ししたものです。 この知見がAIから知識を得たい方のお役に立てると嬉しいです。

最後に

キャディでは様々なポジションで新しい仲間を募集しており、私が所属するAI for applicationチームでも大募集中です。新しい領域に飛び込むことが好きで、技術的な課題解決をしたい方には特にオススメです。ご興味あればぜひカジュアル面談にお越しください! https://open.talentio.com/r/1/c/caddi-jp-recruit/pages/78398